銘々と実損

書かなくていい、そんなこと。

口ずさみたくなる音楽と共に、小旅行へ。京都の10人組バンド・Ribet towns

 

良質なポップソングは時に、聴いている人々を数分間の小旅行へと誘う装置になる。再生ボタンを押すと、ゆっくりとあなたの意識は旅をする。空間や時間を飛び越えた先に広がるのは、憧れていた北欧の風景や、懐かしい故郷の空、または都会の駅のホームだろうか。

 

京都にゆかりのある10人によって結成されたバンド・Ribet towns。様々なルーツを持ったメンバーによって鳴らされる音は、どこか懐かしくて、私たちを色んな場所へと運んでくれる。

トイポップ・北欧インディー・渋谷系などの音楽に影響を受けたサウンドと、大所帯バンドであることを生かした音数や楽器数の多さでコアな音楽好きにもしっかりアプローチしつつ、あくまで歌をメインに据えることで、日常に馴染みやすい曲を作り上げているのが特徴だ。

『メトロ』で得られる、都会の地下鉄に揺られて君の住む街へ向かう3分半の体験。様々な音が交差する鮮やかな前奏はまるで複雑な地下の構造か都心の路線図か。伸びの良い歌声はまっすぐと進む列車のようだが、サビで不意に込められた感情にドキッとしてしまう。

 

『ショートシネマ』の高揚感も素晴らしい。ディナーデート中に、レンタルDVDの返却期限が迫っていることを思い出して帰る、という嘘をつく女の子の物語が非常に秀逸。「7泊8日3ドルちょっとくらいの約束」というフレーズの素敵さもさることながら、映画の世界観に憧れすぎて現実の恋愛で失敗してしまう女の子の夢見がちな生活が、2分半できっちり起承転結ごと見事に収まっている。

 

そんなRibet townsは2月5日にいよいよ初めての音源となる1st mini album『ショートショート』をリリースする。上に紹介した2曲の他にも、何気ない日常を歌った『パレード』(この曲が一番好きだ)、大好きなインスタグラマーへの愛の歌のような『Pose』など、至極のポップソングが5曲収録されて500円。思わず口ずさみたくなる音楽と共に、小旅行をしてみませんか。

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