銘々
誰もいない教室が好きだ。放課後、部活動に勤しむ者、帰宅部らしく帰宅する者、駅前に遊びに行く者、自習室で自学する者、様々なタイプの人間がざっと40名程存在するこの共同体の中で、僕だけが教室に残って、一人きりの時間を過ごしている。 昼間の喧騒をす…
「という流れで、千華はお前に水餃子と言ってチョコを渡した。あ、これは推理じゃないぞ、事実だからな」 貴史はさも満足げな顔をして、事の顛末を話し終えると、乗っていたブランコから飛び降りた。千華さんは少し恥ずかしそうな顔をしながらブランコの柵に…
私は賢人君が好きだ。好きで好きでたまらない。 賢人君は普通の男子中学生だ。特に秀でていることはないし、クラスの中で目立つ存在でもない。ここで言及するべきの変な癖も無いし、もう本当に普通だ。普通過ぎてつまらない。背もそんなに高くないし、顔も良…
前日に戻る 「で、家に帰って開けてみたら」 「ただのチョコレートだった」 「面白いな」 親友の貴史は、僕の話を聞きながらポテトチップスを食べている。 「俺の想定では、ここにはたくさんのチョコがあって、食べ切れないからお前にもやるよ、って言うつも…
「はいこれ、水餃子」 僕は酷く困惑している。今日は2月14日。詰まるところバレンタインデーというもので、僕を含めた世の男子はそれなりに期待をして学び舎へと足を運ぶ訳であるが、期待と言うのは毎度毎度裏切られるものである。しかし今年は裏切られる方…
昔昔あるところにおじいさんとおばあさんがいて、川から流れてきた桃の中に入っていた男の子が立派に成長し鬼を征伐した、という話はあまりにも有名です。 しかしその後もたびたび川上から男の子入りの桃が流れてきて、村の人々もそろそろ飽きてきていました…
「じゃあ、12時にハチ公前集合ね」