銘々と実損

書かなくていい、そんなこと。

岡崎体育のMUSIC VIDEOが大変なことになっている

f:id:arsm12sh:20160421235440p:plain

 

この男、凄い。

 

岡崎体育の『MUSIC VIDEO』のMusic Videoが19日に公開された。ややこしいが、『MUSIC VIDEO』という曲名である。このMVが、本当に話題になっている。

どのくらい話題になっているかというと、SEKAI NO OWARIのFukaseやきゃりーぱみゅぱみゅ、SiMのSINといったミュージシャンがTwitter上でこぞって絶賛、ミュージシャン以外にも話題が広がり、公開3日目にして25万回再生を突破したのだ。ちなみに『MUSIC VIDEO』より12時間以上前に公開されたきゃりーぱみゅぱみゅの新曲MV『最&高』は18万回再生。現時点できゃりーぱみゅぱみゅに勝っている岡崎体育。おかしい。

 

 

まず岡崎体育が何者かを紹介せねばならない。京都出身の26歳。今年の5月にソニーミュージックからメジャーデビュー。「BASIN TECHNO(盆地テクノ)」の伝道師。スーパーマーケットでバイト中。実は昨年あたりからじわじわと知名度を上げており、2016年の音楽界のダークホース的存在と呼ばれていた。

 

サブカル好きな若者なら、彼を知らずに今まで生活できたはずがない。

 

星野源がラジオで推薦。

 

自主制作アニメ「寿司くん」のオープニング曲を担当。

 

メモ書きを読むだけで17万RT達成。


バンビーノが岡崎体育Remixの「ダンソン」を披露。

 

 

地下室Timesの石左氏が2016年で最プッシュするアーティストと公言。

 

そりゃ売れるよね、という要素が積み上がっている。それにしても大きな一発を当ててくれた。

 

『MUSIC VIDEO』は邦楽ロック界隈のMVのあるあるネタが詰め込めるだけ詰め込まれている。動画配信サイトの普及・発達により、費用の掛かるプロモーションが出来ない新人アーティストがクオリティの高いMVを発表してブレイクを目指すことが一般化し、フレデリック、KANA-BOONキュウソネコカミなど多くのアーティストがメジャーシーンへと駆け上がったのはご存知の通り。この流れの中で、MVでよく使われる演出も受け手の間で共有されてきた。蓄積したあるあるネタを絶妙な塩梅でチョイスし、抜群の再現度で演じたのが『MUSIC VIDEO』だ。以下に何点かポイントを挙げる。

 

①最初の30秒が完璧

バズる邦楽MVには共通点がある。最初の20~30秒で受け手の心を鷲掴みにすることだ。

例えば現時点で429万回再生されたキュウソネコカミの『ファントムヴァイブレーション』は、iPhoneの通知音を大胆にトレースしたフレーズとiPhoneのようなスマホの映像、そしてAメロの歌詞のわざとらしさで、明らかにスマホのことを歌っていることを主張。わかりやすく、勢いのある30秒。言ってしまえばほぼ出オチ覚悟で、再生を停止させないための仕掛けを幾つも繰り出している。1000万再生を記録したフレデリックの『オドループ』はとにかく早い。再生ボタンを押したらタイムラグが0で特徴的なフレーズと女の子の顔。視覚も聴覚も30秒で制圧する。

では『MUSIC VIDEO』はどうか。まずはゆるいカラフルなアニメCGと映像のコラボでタイトルを表示。見たことある。いきなり見たことあるよ。あるあるネタは開始0秒で始まっているのである。「カメラ目線で歩きながら歌う」「急に横からメンバー出てくる」という一節が完璧。これを最初に持ってくる岡崎体育が憎い。憎いし偉いし凄い。

 

②難しい言葉は使わない

MVの演出の話をしているのに、専門用語は皆無。「わざとざらついた映像」「二分割で男女を歩かせて最終的に出会わせる」「アナログテレビ何台か並べて砂嵐流しとく」「気に入ってる歌詞を画面いっぱいに張り付けて感受性揺さぶれ」「なんらかのテーマを持ったなんらかのキャラクター」などは、あるあるネタの精度もさることながら、今まで受け手が持っていたイメージを誰にでもわかりやすく言語化している点が素晴らしい。専門用語を用いず、また特定の対象を意識しすぎないことで、邦楽MVのあるあるネタをより大衆に拡散させた秀逸な作品となっている。

 

③引き出しの多さ

同じテンションのあるあるネタ一辺倒では、曲として単調になってしまう。この曲ではあるあるネタを複数のセクションに分けている点がとても良い。最初はあるあるネタのシンプルな列挙から始まり、曲の雰囲気をガラリと変えて「ミュージックビデオにおける女の子の演出講座」を開設したかと思えば、2番では命令形を連発していき、極めつけは「なんのメッセージ性やねんこれ」。全く飽きずに楽しめる仕掛けが満載だ。

 

④サビが超キャッチー

どれだけ映像が良くてもメインは音楽である。そして曲のメイン部分はJ-POPである以上サビである。とにかくサビがキャッチー。「クリエイション」と連呼する部分の音としてのポップさに、気持ち悪いほどの笑顔で踊る岡崎体育の姿が重なって、頭に残りまくるのである。まあずるい。ずるいよ。気持ち悪い。気持ち悪いくらいにポップ。

 

⑤MV制作の大変さが滲み出ている

この曲はMV制作者を馬鹿にしているのか。違う。断じて違う。これはMVへの愛の歌なのだ。様々な技法や演出方法を試したため、編集者曰く撮影時間は100時間超え。編集時間も含めるとどれほどの労力がかかっているのか、4分28秒に懸ける思いが凄まじいのである。そして編集スタッフは超少数、予算もほぼ無し。最後の空撮っぽいシーン、明らかに人力。ドローンなんて持ってない。

 

現時点で26万回再生。書いている間に1万回再生されたようだ。これがどこまで伸びるのか、岡崎体育がどこまで世間に浸透するのか。本当に楽しみだし、ちゃんと売れてMステに出てほしい。出たらすごい泣くと思う。俺が。