「お笑い第7世代」というフレーズが、徐々に浸透しつつある。
きっかけとなったのは2018年にM-1グランプリを制した霜降り明星のせいやが、M-1優勝後に自身のラジオ番組で発した言葉だった。
「お笑い芸人のみならず、若い世代で集まって、“第7世代”など名前をつけていけば、ブームになるのでは」
その後、第7世代は改元のタイミングであったことも影響してか、主に平成生まれの芸人を指す言葉としてメディアで使われるようになった(一部例外あり*1)。ENGEIグランドスラムでは3月に「平成生まれ限定!お笑い第7世代特集」が組まれ、6月には第7世代を特集したムック本「芸人芸人芸人」も発売された。また、ハナコ、EXIT、宮下草薙、四千頭身らがテレビでの露出を徐々に増やし、言葉の定着と共に第7世代芸人たちも存在感を増しつつある。
そんな中、2019年8月17日放送のENGEIグランドスラムで2度目の第7世代特集が組まれた際、以下のような図で過去のお笑い史について説明されたのが、やや物議を醸している。
第5世代と第6世代は「多数」とされている。要するに、第4世代と第7世代の間である、第5・第6世代については、はっきりとした定義や代表番組がないのだ。
このうち「お笑い第5世代」に関しては、爆笑オンエアバトル、エンタの神様、笑いの金メダルなどの「ネタ見せ番組」が増加し、M-1グランプリやキングオブコントなどの賞レースも登場した2000年代のブレイク芸人を指すという説が一般的である。しかし、「いつ第5世代が終わり、第6世代に移行したのか」を明確に説明できない点が、第5・第6世代の定義を難しくしている。もっと言えば、「第6世代って本当にあったのか?」「誰が第6世代に当たるのか?」という疑問を多くのお笑いファンは抱えている。
よって本連載は、空白・曖昧とされがちな「お笑い第6世代」について定義し、解説していくことを目的とする。
今後、このようなコンテンツを予定しています。
・2000年以降のネタ見せ番組ブームとお笑い第5世代
・レッドカーペットが引き起こした空前のショートネタブーム
・いつから第6世代なのか?
・ショートネタブームの終焉が第6世代に与えた影響
・THE MANZAIに結成年縛りが無い問題
・第6世代の巨大な敵・千鳥
・浜口浜村と三四郎とドリーマーズの3組のライブ(仮)とライブシーン
・認定漫才師になってもいいことがない
・オンバト+で勝ってもいいことがない
・ウエストランド、いいともレギュラー抜擢の謎
・大迷走!キングオブコントは死んだ
・M-1復活がもたらした熱狂と失われた5年
・気付いたら第7世代がやってきた
・金属バットとランジャタイが第7世代を名乗ることを許すな
お笑い第6世代の定義~誰が第6世代なのか~
誰がお笑い第6世代に当たるのか。先に、私が考える第6世代の定義を示しておく。
「2000年代中盤から後半に活動を開始した芸人のうち、2000年代後半のネタ見せ番組ではあまり結果を残せなかった芸人」
なぜこのような定義に至ったかは連載で追って説明するとして、この定義における第6世代の代表芸人はこのあたりである。
お笑い第6世代の主な芸人
三四郎、サンシャイン池崎、ジャングルポケット、パンサー、ニッチェ、トレンディエンジェル、チョコレートプラネット、アルコ&ピース、尼神インター、メイプル超合金、あばれる君
いずれも、主に2010年代にブレイクを果たし、テレビで活躍している芸人たちだ。代表番組は確かに無い。それぞれバラエティ番組や賞レースでチャンスを掴み、厳しい芸能界を生き残っている。
なお、これらの芸人をデビュー年*2で並べると以下のようになる。
2005年:三四郎、トレンディエンジェル、ニッチェ、アルコ&ピース*3
2006年:パンサー*4、サンシャイン池崎、チョコレートプラネット
2008年:尼神インター
2009年:あばれる君
2000年代後半デビュー組の分類
先述の通り、お笑い第6世代は「2000年代中盤から後半に活動を開始した芸人」であると考えている。NSC大阪校であれば26期~31期、NSC東京校であれば9期~14期、スクールJCAならば12期~17期ごろに当たる。*6
これらの芸人たちは、大きく分けて3つのグループに分けられる。
①芸歴が浅いうちにエンタの神様やレッドカーペットなどのネタ見せ番組で見出されブレイクした芸人
オリエンタルラジオ、渡辺直美、エド・はるみ、ハリセンボン、はんにゃ、フルーツポンチ、しずる、柳原可奈子、狩野英孝、藤崎マーケット、阿佐ヶ谷姉妹、ジョイマン、鳥居みゆき、ジャルジャル、ハライチ他
②エンタの神様やレッドカーペットなどのネタ見せ番組ではあまり芽が出なかったものの、2010年~2018年ごろにバラエティ番組や賞レースでブレイクを果たした芸人
三四郎、サンシャイン池崎、ジャングルポケット、パンサー、ニッチェ、トレンディエンジェル、チョコレートプラネット、シソンヌ、アルコ&ピース、うしろシティ、さらば青春の光、銀シャリ、和牛、かまいたち、尼神インター、メイプル超合金、あばれる君他
③その他の同世代芸人
浜口浜村、ドリーマーズ、巨匠、モグライダー、リニア(元S×L)、ザンゼンジ、湘南デストラーデ、三日月マンハッタン、ジグザグジギー、トップリード、ジンカーズ、マヂカルラブリー、ヘンダーソン、ジソンシン、アイロンヘッド、令和喜多みな実(元プリマ旦那)、井下好井他
① | ② | ③ | |
2004年 | ハリセンボン、しずる、藤崎マーケット、狩野英孝 | 和牛、かまいたち、バイク川崎バイク | ゆったり感、囲碁将棋、THE GEESE |
2005年 | オリエンタルラジオ、はんにゃ、フルーツポンチ、柳原可奈子 | トレンディエンジェル、三四郎、サンシャイン池崎、アルコ&ピース、ニッチェ | GAG、トット、タナからイケダ、ピーマンズスタンダード |
2006年 | エド・はるみ、ハライチ、フォーリンラブ | パンサー、チョコレートプラネット、シソンヌ、うしろシティ、サンシャイン池崎 | リニア(元S×L)、ラフ次元、ロングロング、井下好井、シューマッハ、ジグザグジギー |
2007年 | 渡辺直美、阿佐ヶ谷姉妹 | ジャングルポケット、さらば青春の光、メイプル超合金 | マヂカルラブリー、コマンダンテ、吉田たち、見取り図、ヤーレンズ、ジェラードン、笑撃戦隊 |
2008年 | 尼神インター、やしろ優、日本エレキテル連合、ウエストランド、バンビーノ | 令和喜多みな実(元プリマ旦那)、アイロンヘッド、田畑藤本、ザンゼンジ | |
2009年 | ANZEN漫才、あばれる君、相席スタート | 巨匠、パンダユナイテッド、ダイタク、ネルソンズ、セルライトスパ、エル・カブキ |
先に第6世代の代表芸人に挙げたのは主に②のグループである。①のグループもほとんど芸歴が同じであるが、先にブレイクしたためか第5世代として扱われることが多い。
どこからが第5世代で、どこからが第6世代なのかを考察するためには、2000年代のお笑いブームを振り返る必要がある。
次回の連載では、
・2000年以降のネタ見せ番組ブームとお笑い第5世代
・レッドカーペットが引き起こした空前のショートネタブーム
を振り返りつつ、第5世代と第6世代の変わり目について考えていく。
*1:平成生まれではないものの第7世代に括られる芸人も多くいる。コロコロチキチキペッパーズのナダルやEXITのりんたろ~。など。一般的には2010年以降に活動を開始・コンビ等を結成した芸人が「第7世代」と呼ばれがちである。また、定義上は金属バット(2006年結成)とランジャタイ(2007年結成)は第7世代ではないが、「芸人芸人芸人」に登場するなど、第7世代として扱われている。
*2:基本的にはコンビの結成年
*3:アルコ&ピースは平子と酒井に芸歴の差があるが、後輩の酒井が2005年デビュー組である
*4:パンサーは3人の芸歴が全員違うトリオである。一番後輩の向井はNSC東京校11期であり、チョコレートプラネットやシソンヌと同期。
*5:メイプル超合金はカズレーザーが TOKYO☆笑BIZの4期生で2007年デビューである。
*6:ちなみに、第5世代は1990年後半~2000年前半組がほとんどであり、第7世代の多くが2010年以降の活動開始である。