銘々と実損

書かなくていい、そんなこと。

M-1グランプリ2018 プレビュー

こんなことをするのは野暮だよなと思いつつも、M-1グランプリ2018の決勝のプレビューを書いておきます。終わったあとに裏切られた~みたいな大会になってくれたらいいですね。箇条書き。

 

 

M-1の決勝ファーストラウンドは、出番順と審査員の顔ぶれが非常に重要になる、という当たり前の話からします。まずは出番順について。

 

・1、2番手は最終決戦進出において非常に不利であり、過去に1,2番手で出場した26組のうち、最終決戦に進出したのはたったの4組。中川家(2001年・1番手)、ますだおかだ(2002年・2番手)、笑い飯(2005年・1番手)、フットボールアワー(2006年・2番手)と、いずれも優勝経験のある超実力者である。2006年のフットボールアワー以来、7大会連続で最終決戦進出者が出ていない。

 

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色を付けたところが3位以内、すなわち最終決戦進出です。

 

・逆に、最も有利とされるのが最終ネタ順(今年であれば10組目)。過去13大会のち9回も最終決戦に進出している。ただし、2016年までは敗者復活で勝ち上がったコンビが最終のネタ披露だったが、2017年大会からは後述する「笑神籤(えみくじ)」の導入によって、誰がラストの出番になるかわからなくなった。

 

・このように、ある程度出番順によって順位が左右されてしまうことや、敗者復活組があまりにも有利であるということを是正するため、2017年大会から「笑神籤」という、出番直前にくじを引いて出たコンビがネタを披露する、という形式に変更された。この笑神籤の導入によって、敗者復活組が有利になり過ぎる、という面は解消されたものの、依然として1、2番手が不利であることには変わらない。

 

・なお、これらの出番順による平均得点や平均順位の比較はWikipediaのページにもあるので、これ以上の詳しい説明やジンクスが知りたい場合はそちらを確認するか、自分で調べてほしい。

 

・要するに、事前に出番順がわからないので、予想がほとんどできないよね、っていう言い訳をしたいのだけれど、そうもいかないので、唯一予想っぽいことができる審査員の話をします。

 

M-1はあくまでも一番面白かった漫才師を決める大会ではなく、1~3番目に審査員から得点を集めた漫才師が最終決戦に進み、その中の3組の中で最も票を集めた漫才師が優勝する大会なのである。そういう風に割り切らないと説明が付かない事柄もたくさんある。

 

・たとえば、2017年のファーストラウンドの審査員7人のうち、今年も引き続き審査員を務める4人(上沼恵美子さん、松本人志さん、中川家・礼二さん、オール巨人さん)だけの得点を抜き出して計算すると、順位が入れ替わる。その場合、1位がミキ、2位が和牛、3位がかまいたちとなり、4位がジャルジャル、そして優勝したとろサーモンは5位に沈んでしまうこととなる。誰が審査するか、は当然ながら重要な要素。

 

・また、今年審査員から外れた大吉さん、小朝さん、渡辺正行さんの3人はいずれも最終決戦でとろサーモンに票を入れている。今年の審査員で去年の大会をやったら、とろサーモンが優勝できていたかどうかはわからない。まあ去年のとろサーモンめちゃくちゃ面白かったし、優勝には何の文句もないですが。

 

・一番のトピックスは、審査員にナイツの塙さんとサンドウィッチマンの富澤さんが選ばれたこと。2人共、漫才の「新規性」に重きを置いて審査をしてくれそうなのがポイント。非吉本かつM-1経験者というところも良い。関西出身の審査員は比較的、漫才の巧さや展開力に重きを置きがちなので、この2人が加わるとかなり審査の基準が変わるのでは?というのが大方の予想。少なくとも、ツカミや伏線回収など、漫才の技術を重視する博多華丸・大吉の大吉さんと入れ替わるのはデカい。

 

・同じく今年から審査員になる立川志らくさんの評価基準は不明。

 

・それらを踏まえて、出演コンビに関して考えると、審査員の入れ替わりがジャルジャルにとって追い風になるのでは、と推測。昨年のジャルジャルに対し、非常に高い評価をしていたのが松本人志さんやオール巨人さん。特に、松本さんはジャルジャルに最高得点(95点)を付けている。反対に、ジャルジャルに比較的低い点数を付けたのが、渡辺正行さん、小朝さん、礼二さん。そのうち、渡辺正行さんと小朝さんが審査員から外れた。また、2015年以来の審査員となる富澤さんはその2015年にジャルジャルを最高得点と評価している。つまり、ジャルジャルのような、漫才に新しいスタイルを持ち込むことを是とする審査員が多いのではないか、という、これは推測というよりも期待に近い。なんてったってジャルジャルはラストイヤー。2017年の「ピンポンパンゲーム」を超える、新規性と独創性の高い漫才を披露できれば、最終決戦への進出はかなり期待できる。2本目で勝負ネタがあるかどうかは置いといて、今年の準決勝のネタで十分、最終決戦に出られると思ってます。

 

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・去年のファーストラウンドで、審査員の最高得点を誰が得ていたかというのが上の図。とろサーモンに最高点を付けた審査員は0人。ファーストラウンド首位の和牛が高い評価を得ていた中で、礼二さんとオール巨人さんはかまいたちに最高点を与えている。そんなかまいたちの敗因は、上沼さん、小朝さん、渡辺正行さんにハマらなかったこと。上沼さんさえ攻略できれば、かまいたちに大きなチャンスがあると思われる。

 

・というわけで、優勝予想はかまいたちM-1で強いとされる正統派のしゃべくり漫才かつ、知名度も実力も十分で、決勝進出経験もある。若干前半の笑いの量が少ないという欠点があるけれど、後半がめちゃくちゃ強い。「うねり」を起こすほどの笑いも取れるはず。サンド富澤さんがあまり正統派に高い点数を付けない傾向にあるものの、彼はあまり点差を大きくつけるタイプでもないのでそこまで影響がないはず。1、2番手にさえならなければ、きっちり結果を出してくれると思います。

 

・優勝候補筆頭、2年連続2位の和牛は、「笑い飯ルート」に入るかどうかの正念場 。毎年スタイルを変えて勝負してきているので飽きはないけれど、一昨年も去年も優勝して然るべきクオリティのネタで勝てなかったので、相手との戦いよりもまず己との戦いになってしまう。前よりも面白くかつ新規性のあるネタで勝負しないと勝てないのだから、かなり苦しい。己との戦いに打ち勝った笑い飯の「鳥人」「サンタウロス」は凄まじかった。そのレベルのネタが求められるのは、正直しんどい。それでさえしんどいのに、ラストイヤーのジャルジャルスーパーマラドーナ、そして漫才だけのために1年準備してきたかまいたち、さらには物凄く勢いのある敗者復活組にも勝たなくてはならない、というハードモードのため、下馬評が少し低めになっている。下馬評が低いというのは逆にありがたいこと。ただただ和牛の漫才のファンなので、面白い漫才が2本見れたら、もう文句は言いません。

 

・和牛と同じく4年連続4回目の決勝進出のスーパーマラドーナは今年がラストイヤー。5位、3位、4位とあまりにも安定している戦績で、展開力のあるネタを披露することから、礼二さんや大吉さん、オール巨人さんからの評価が比較的高い。今年もそれなりのネタを披露するだろうし、うまくいけば最終決戦もあり得るけれど、スーパーマラドーナが優勝、という絵がなかなか見えない。麒麟もそうだったが、掛け合いのないタイプのコント漫才M-1を優勝するのは相当難しいと感じる。で、ネタを書いている武智さんも同じように思ったらしく、違うスタイルで勝負するとのことです。楽しみ。

 

・男女コンビ初の優勝が期待されるゆにばーすは、去年はネタ順が後半であればもっと順位が高かっただろうし、その意味で真価を問われる。伏線回収を評価してくれる大吉先生はいないけれど、唯一の東京吉本勢として、審査員に関東勢が多いのはプラスになるのだろうか。川瀬名人M-1オタクなので色々な理論を知っているけれど、その川瀬名人が「決勝はルール無用」「見たことがない漫才をしないと勝てない」と言っていて、まだその域に達していなことも自覚した上で、どういう漫才をするのか、というところ。

 

・決勝初進出組で一番期待したいのは霜降り明星。ただし、例年の審査の傾向から見ておそらく霜降り明星のネタを一番評価したのは渡辺正行さんだっただろうと思うので勿体ないというか、巡り合わせというか、そういうものを感じます。ひとまずお客さんとお茶の間には十分にハマると思います。この2人はいつかちゃんと売れそうというか、粗品がMCやってる姿はそれなりに想像できるので、売れる前にどれだけ漫才のクオリティを高められるかっていう勝負になる。三四郎は漫才を完成させる前に売れちゃったしね…

 

・トム・ブラウンに関しては、ノーコメント。

 

ギャロップはもう少し早く決勝に出させるべきだったと思う。ただ、ボケとツッコミがシームレスになってからますます面白くなっていて、このタイミングで満を持して決勝に出るっているのは何か意味のあることなのかもしれないなと思ったりします。関西・しゃべくりという点で、かまいたちをどう上回るかがカギ。盛り上がりを作るという面ではかまいたちに分がある。あとは出番順次第なんだろうなと思うのですが。

 

・見取り図は、最終決戦に進めるかという点では厳しい戦いになりそう。ツッコミのワードセンスや声質が一番の持ち味なので、聞けば聞くほど、見れば見るほど癖になるというタイプ。「あたおか」「おっかく」などの言葉の響きに初見でどれだけついていけるのか、という危惧もある。好きなので、ただ楽しみたいと思います。

 

・敗者復活戦も今年から出番順が抽選に変わるらしく、どこが勝ち上がるか予想しづらくなっている。順当に考えると去年最終決戦に出たミキが筆頭候補。次点でプラス・マイナス。で、ミキが勝ちあがったらたぶん最終決戦に行くと思う。勢いがある漫才師が勝ちあがったら怖い。

 

・よって予想。優勝かまいたち。2位和牛。3位ミキ。4位ジャルジャル、5位ギャロップ、6位スーパーマラドーナ、7位ゆにばーす、8位霜降り明星、9位見取り図、10位トム・ブラウン。これは霜降り明星がトップバッター、ゆにばーすが2番手だった場合の予想です。霜降り明星やゆにばーすが良い出番だったらギャロップを抜けると思いますが、なんか出番順が味方しなさそうな気がするんだよな。

 

・ここまでは予想で、個人的に好きなコンビしか出てこないので、本当に楽しみです。ラストイヤー組が報われてほしいなと思っちゃうと、どうしても若手陣には遠慮して頂いて…みたいな予想になっちゃうんですけど、そういう順番みたいなものを完全に無視して大爆笑を掻っ攫う霜降り明星やゆにばーすの姿も見たい。あと、トム・ブラウンのことを考えると不安で眠れません。とにかく楽しみ過ぎるので既に過去大会を5周くらいAmazonプライムビデオで見ました。いざ、決勝!!!