銘々と実損

書かなくていい、そんなこと。

サガン鳥栖vsヴィッセル神戸 マッチレビュー 2018J1開幕戦 理想と現実とお金を出してくれる人たち

史上初の金曜開幕

2018年もJリーグが開幕だ!今年は史上初となる金曜開幕でスタート。DAZNから各節1試合は金曜開催をしてくれよ、と要請があったらしい。10年で約2100億円という巨大契約を結んでいる手前、Jリーグは断れない。「明治安田生命Jリーグ フライデーナイトJリーグ Powered by DAZN」と銘打たれたこの施策。DAZN中継での試合開始前の煽りPVは相当に力が入っていて格好良かった。とりあえずやってみて、駄目ならやめればいい。いつだってJリーグはそうしてきた。2ステージ制とか。

そんな記念すべき開幕ゲームの対戦カードは、サガン鳥栖ヴィッセル神戸鳥栖のホームゲーム。Cygamesマネーでムキムキになってきた鳥栖と、楽天マネーが惜しみなく投入されている神戸。そしてPowered by DAZN。なんだかお金の匂いがプンプンするマッチメイクだ。昨年の平均観客数より5000人以上多い観衆が詰めかけたというベアスタことベストアメニティスタジアムには、元東方神起ジェジュンとそのファンも詰めかけていた。どうでもいいけれど、倖田來未も来ていた。f:id:arsm12sh:20180228140224p:plain

マッシモ、インフルエンザ

2012年に尹晶煥監督の下、J1初挑戦で5位という好成績を残し、そこからJ1に定着したサガン鳥栖。だが、あの時のお馴染みのスタメンは殆どチームを離れている。水沼が去り、藤田が去り、林が去り、金民友が去り、ついに豊田陽平も(レンタルだけど)いなくなっている。高橋義希池田圭がかろうじてベンチに残る。率いるのは3年目のマッシモ・フィッカデンティだが、開幕直前にインフルエンザでまさかのダウン。この試合に限りブルーノ・コンカコーチが指揮を執る。

スタメンは4-3-3。予想図ではキムミンヒョクが右CBだけれど、実際はチョンが右、キムは左だった。作った画像には間違いがあり、6番は藤田じゃなくて福田。去年からの変化として、フィッカデンティの教え子・高橋秀人がアンカー起用されている。したがって高橋義希は控え。高橋から高橋へ。ベンチにはもうひとり高橋がいる。それと、なぜだかイバルボがベンチにもいない。河野もいない。マッシモにインフルをうつされた、という説が濃厚だ。

キャプテン・ポドルスキバルサスタイル

ポドルスキがキャプテンに就任!しかも、バルサスタイルを目指すって三木谷社長が言っている!と、今年もなんだか愉快なヴィッセル神戸は、ウェリントン、チョンウヨン、三田啓貴那須大亮、ティーラトンなどを補強したものの、岩波、大森、ニウトン、高橋秀人、ウエクスレイらが去った。単純計算では、守備面マイナス、攻撃面プラス、といったところ。

新戦力からは三田と那須がスタメン入り。事前には「ポドルスキがアンカー!」という記事が出ていた。実際にはさすがにアンカーではなかったけれど。代わりに三田が前に出る。昨年、ベガルタのサッカーを中盤で支え、日本屈指のMFへと成長しそれなりの違約金を残して神戸に引き抜かれた三田啓貴。まさかの右ウイングで起用されていて、TLではベガサポが総ツッコミ。DFラインでは岩波out那須inによって、伊野波・那須・北本の中から渡部の相方の最適解を探すことになる。伊野波32歳、那須36歳、北本36歳。ルーキーの宮大樹がどこかのタイミングで出番を掴みそうな予感。

開始2分でのPKと鳥栖の狙い

ゲームは早々に動く。まだ2分のことだった。ボールが落ち着かない展開から、高橋秀人が裏に蹴り込んだボールに田川享介が全力疾走。あっという間に那須と入れ替わる。たまらず那須は手を使って田川を倒し、これがPKの判定。スピードが魅力の19歳田川と、36歳の大ベテラン那須のマッチアップだった。単純な徒競走になると那須は相当に分が悪いことが分かっている。だからこの試合で那須は田川の裏取りを警戒し、最終ラインを揃えることよりも田川と距離を取ることを優先して守っていた。しかし、このシーンでは直前に中盤とDFラインの間に入った浮き球を跳ね返すために前に出ていて、そこから戻っている途中であり、田川との十分な距離を取ることができなかった。もう少し中央寄りにボールが出ていたらスピードのある藤谷が絞って対処したかもしれないけれど、あの位置に入ったボールのカバーリングサイドバックに要求するのは少々厳しい。

田川のPK*1で運良く先制した鳥栖。序盤の鳥栖はボールを保持していく意思はなく、ロングボールを蹴って前線の3枚の機動力を生かしつつこぼれ球も頑張って拾う、みたいなサッカーを展開していた。神戸にボール保持をさせないという意図もあった。神戸のCBはスピードに難があり、逆に鳥栖の3人は田川を中心に速いので、競るボールというよりは裏を目掛けて蹴っていたのが印象的。PKもその形で得たので、狙い通りだったのかもしれない。イバルボが帰ってくれば彼をターゲットに出来るので、さらに脅威が増すと思われる。走行距離トップ常連の高橋義希はいなくとも、相変わらず走るチームだ。

姿を現し始めた神戸のバルサスタイルとその弱点

f:id:arsm12sh:20180228154020p:plain

出鼻を挫かれた格好の神戸だが、キャンプで仕込んだポゼッションサッカーで主導権を握りたい。攻撃時のシステムを見ると、両サイドバックがわりと高く横に開いたポジションを取っている。特に藤谷のポジションは高かった。よって、橋本は福田が見るけれど、藤谷は吉田が対応していた。横幅を一杯に広げているサイドバックの存在により、両ウイングの三田・渡邉は中央寄りにポジショニング。目指すはちょっと前のバルセロナ。藤谷はダニ・アウベス。両センターバックも大きく開く。真ん中には三原が降りたり、降りなかったり。時間が進むにつれて三原が落ちて3バックでのビルドアップという回数は増えた。どんなに補強をしてもなぜかスタメンへ収まる三原雅俊田中英雄の正当な後継者と言える。

ビルドアップではポドルスキセンターハーフの位置に降り、サイドに展開する。守備時にはポドルスキが前に出て4-4-2になる。前に出るというか、残っているというか。センターハーフの位置にいるからといってセンターハーフの守備タスクをしてくれるわけではないポドルスキ。そこにブスケツはいない。よって広大なエリアを松下と三原でカバーしなければならないが、彼らはサイドバック不在の後方のバランスも気にする必要があり、ネガティブトランジションの局面では明らかに中央に人数が不足していた。対して鳥栖3センター、3トップ。ここの枚数は相当違う。よって序盤からカウンターのチャンスを何度も作る鳥栖。神戸のパスミスも目立ったので、奪って速攻というシーンは何度もあった。ロングボールを蹴らずとも攻め入れることがわかったので、鳥栖は序盤のような裏狙いのボールが少なくなった。

f:id:arsm12sh:20180228154450p:plain

ボール保持の神戸vsカウンターの鳥栖

15分を過ぎるころには試合の形が定まる。ボールを回す神戸とカウンターを狙う鳥栖。神戸はカウンターの守備時に誰も帰ってこない。サイドハーフではないから三田と渡邉は帰ってこない。当然ハーフナーもポドルスキも来ない。さらに高い位置にいる藤谷と橋本も戻りに時間がかかる。よって常に45人程で守ることを強いられる神戸。ボール保持の精度を高めて奪われずにゲームを支配したいが、よりによってミスを連発。試合は完全に鳥栖ペースになる。ただし鳥栖も追加点を決めきれず。サイドを崩すものの、最前線のチョドンゴンはマイナスで受けようという癖があり、味方となかなか合わない。イバルボがいたら解決するのだろうか。

2センターバックと3センターハーフでビルドアップを行う神戸だったが、この5人のうちポドルスキ以外はサイドチェンジのパスも縦パスも蹴れない選手たちだったので、短いパスを回してポドルスキをフリーにし、彼の長いパスによってボールを前進させる、という戦法が主だった。出し手がポドルスキしかいないので、鳥栖はパスカットを狙いやすい。中央を締める高橋秀人。神戸は最後列から出し手になれる岩波が抜けたのが地味に痛い。三田なら長いパスも使えるけれど、守備面の運動量を優先して三原と松下を起用したのだろう。松下はもう少しパスを出せる選手だと思っていた。

さらに神戸にとって誤算だったのは、右サイドで高い位置を取った藤谷アウベスが対面のサイドバックである吉田豊に完封されていたことだった。それはもう見事な完封だった。何もできない藤谷。せっかくポドルスキのパスでサイドにボールを運んでも、対面が抜けない。吉田を釣り出しておいてその裏に誰かが走り込む!みたいなプレーも皆無だった。位置からして三田がそれをすべきだったのだろうけど、彼はそういう選手ではない。結果として藤谷は吉田に1回も勝てなかった。吉田豊恐るべし。経験の差もあるかもしれない。なお、那須と田川のマッチアップはほぼ田川に軍配。ここには経験を上回るスピードの差があった。

ポドルスキスタイルの憂鬱

30分、松下にイエロー。右サイドを独走状態だった小野を横からスライディング。松下のカバーエリアは広い。中央と、サイドバックが上がったスペース。三原が最終ラインにいる時はこれを一人でこなさなければならない。厳しい。三田と渡邉は相手のサイドバックインサイドハーフの両方を見なくてはならない。こっちも厳しい。なんだか1人あたりの役割が多い。1人少ない状態で試合をしているような。バルサスタイルもとい、ポドルスキスタイルの宿命。

カウンターと撤退守備の繰り返しでちょっとずつ疲れていく鳥栖。疲れても頑張れるのが鳥栖の良いところである。同数でプレスされた場合は、権田を使いつつロングボールをサイドに蹴っ飛ばす。サイドハーフ不在の神戸の隙を突き、3人以上を同サイドに固めることでサイドを完全に掌握していた。どちらのサイドにも流れて突破できる小野がいやらしい。そしてサイドからクロス。しかし相変わらずチョドンゴンには合わない。クロスへの入り方が独特。

f:id:arsm12sh:20180228144156p:plain

ボール保持の時間が長くなると、両サイドバックはますます高い位置を取り、三原が最終ラインに降り、徐々に3-2-5っぽくなる神戸。鳥栖としても4バックで相手の5人を見るのは単純に厳しい。左は藤谷絶対抑えるマン吉田に任せるとして、完全撤退時は福田が橋本の担当になるなど、ほぼ5バックで数的不利を解消していた。鳥栖のスライドよりも早くボールを動かせれば神戸にもチャンスがあるのだけれど、自身のシステム変換の隙が大きすぎる。そして、スプリント不足、トラッキング不足は長年の神戸の課題。走れる大森は1年で去った。じゃあ前で誰が走るのだろうか。三田がまあまあ走っていたが、彼がひたすら消耗するのでは勿体ない。仙台方面からは嘆きの声が止まらない。せめて小川がトップフォームでスタメンに入れれば変わるかもしれない。もしくは中坂だろうか。

鳥栖が5バックになると、福田がいた場所にはスペースが空く。渡邉がそこに顔を出してボールを受けてチャンスになる。その展開から渡邉がミドルを放つが、中でフリーで待っていた三田とポドルスキが「パスだろ!」と怒っていた。上がっていた松下も、「あっちですよ!」と2人を指差す。ポドルスキの子分と化す松下。うまくいっていないチームの典型のようなシーンだった。3年で30ゴールを決められるストライカーなのに、サイドに配置され、慣れない仕事を懸命にこなしていても怒られてしまう渡邉千真が切ない。もうベテランなのに。 

後半に向けて

前半はこのまま終了。PKで先制した鳥栖だが、その後はカウンターの局面が多いもののチャンスメイクに難あり。とはいえ後半も神戸がずっとボールを回してくれるのなら同じようにゲームを進めていきたい。あとはこの献身性をどこまで続けられるかと、追加点をどう取るか。前者はいざとなれば高橋義希池田圭を入れて運動量を強化するだろう。後者はこれといった切り札が無い。豊田はもういないのだ。

配置の優位を生かせず、ポゼッションは不発、中盤の局面では完全に数的不利。相手にカウンターを何度もリプレイされていた神戸は修正が必要となる。ハーフタイムに紹介された各選手の平均ポジションが全員ほぼ横一線となる珍しい形となっていた。適度にばらけている鳥栖とは大きな違い。 

バルセロナを離れイングランドへ向かう神戸

神戸の後半の修正は、なんとハーフナーへのロングボール大作戦。バルサスタイルから、プレミア下位チームの戦術へ。165度くらいサッカーを変える恐ろしい手だった。とはいえ、単純なロングボールであってもハーフナーの勝率はさすがだ。落としは三田が拾う。きっちりパスとして成立するレベルの精度で落としてくれるハーフナーなので、拾うというよりは受ける形の三田。現実に即したというか、戦力に見合った作戦でボールを着実に前進させる神戸。中盤省略サッカーならポドルスキに組み立てをさせるのはますます勿体なくないか?という気持ちはみんな感じている。

鳥栖は明らかに戸惑っていた。話が違うじゃないか!と言いたげな選手たち。ハーフタイムの間に相手チームが海を渡り1000km以上も北に移動している、なんてことが起こったら、驚くのは至極当然だ。47分にロングボール大作戦で得た神戸のコーナーキックで権田がまさかのキャッチミス。こぼれたボールは渡部が押し込むが、無情にもバー。これが決まっていたら試合の展開は大きく変わっていただろう。

鳥栖の選手交代と6バック化

ロングボール大作戦の利点はいろいろある。ハーフナーが競り勝てるので簡単に相手の陣地にマイボールで侵入出来る。前の配置人数の多さを生かせる。奪われる位置が深いのでカウンターを浴びにくい。などなど。事実、鳥栖のカウンターは極端に減っていった。鳥栖が疲れていったというのもあるけれど、作戦変更がもたらしたものでもある。最終ラインで奪ってもそこから勢いのあるカウンターをするのは厳しい。よって、ただ跳ね返すばかりになっていく鳥栖

ハーフナーだけに気を取られていると、渡邉が中に入りゴールを狙ってくる。さらにポドルスキも重要な場面ではペナルティエリアに侵入してくる。一気に6人ほどが前に攻め上がってくる神戸の放り込み攻勢にタジタジとなる鳥栖。同点となるのは時間の問題かもしれない、というくらいに後半は頭から神戸が押していた。そこで59分にコンカ代理監督が動く。チョドンゴンに代わって池田を投入した。チョドンゴンは頑張れるし、いい選手だと思うけれど、今日を見る限りではクロスのターゲットには不適だった。運動量のある池田を入れ、田川と2トップに。小野は左のサイドハーフに、福田は右サイドハーフになった。いざとなればサイドハーフが最終ラインまで戻って、6バック化も厭わずに守備の数的不利に対抗する。こうなると攻めることはできない。守るだけ。後半は意図的に渡邉が相手のサイドの裏を突こうとランニングを繰り返していたので、サイドのスペースを埋めるのが急務ではあった。 

f:id:arsm12sh:20180228144855p:plain

理論的な選手交代の応酬

この布陣変更を見て、神戸は65分に2人を交代するウェリントンと小川が出てくる。渡邉と橋本がアウト。裏抜けをやっていた渡邉だが、相手の後ろが6枚だとさすがにスペースがないので、どうせならツインタワー並べたろか!という選択。そして、小川慶治朗はまさかのサイドバック。アイアム・スプリントキング・小川慶治朗。神戸の公式サイトにそう書いてあった。確かに、あのくらい極端な高い位置を取るサイドバックなら、小川でもやれなくはない。神戸のサイドバックはほとんどウイングだったので、実は小川で良かった。残り25分もあるのに、ウェリントンとハーフナーでのパワープレーを選択して開幕戦から死に物狂いで勝ち点を奪いに来る。

後半は完全に押し込まれチャンスのチャの文字もない鳥栖フィッカデンティから監督業を任されたコンカコーチは、この事態を5バックで凌ぐことに。田川を代えて187cmの新加入DF高橋祐治を投入。残り20分の状態でイタリア人らしく守備固めのカードを切る。イタリア人の参謀もまたイタリア人なのだ。しかし高橋祐治の投入は引いて守るだけの采配ではなかった。池田の投入以後はほとんど6-2-2のシステムになってしまったが、このままでは守り切れないと悟ったのだろう。サイドのスペースを突いて来る渡邉は退いたから、後ろに6枚も並べる必要は無い。それよりも、ウェリントンとハーフナーが鳥栖サイドバック(吉田と小林のことだ)を狙い撃ちにしてきたら完全に競り負けてしまうので、中央の高さの補充が最優先だ。5-3-2にすることによって、真ん中の3枚を本職の福田・高橋秀人・原川に戻し、前線には小野を一列上げて池田と2トップに。

攻撃時の鳥栖の狙いはサイドバックが上がった後ろのスペースだ。この位置を狙うのであれば、やはり小野裕二がチームで一番上手い。6バックの一員に組み込んでしまうのは勿体ないタレントだ。小野を最前列に配置し、途中出場の池田と共に虎視眈々と裏を狙う。守備では中にフリーでクロスを入れられないように、2トップとインサイドハーフでボールホルダーにしっかりプレスをかけていた。たまに奪えればカウンター。狙いがはっきりしたことで、鳥栖は小野と池田のコンビがチャンスまであと一歩というシーンを作ることに成功していた。要するに、良い修正だった。ただし、プレッシングの足が止まった時に痛い目に合う可能性もある鳥栖。最後まで頑張れるかがポイントになる。

放り込みを徹底する神戸、耐える鳥栖

神戸の最後の交代カードは藤谷に代えてティーラトン。高精度の左足を期待しての起用だ。小川が右サイドバックにチェンジ。この時間帯でも強度を失わない鳥栖のプレッシングの前に、神戸はなかなか効果的なクロスを入れられずにいた。小川に課せられた役割も曖昧なままだ。ただクロスを蹴るだけなら、他の選手でいいような。三田を下げるとか。でも、ティーラトンならクロスをシンプルに入れてくれるだろう。つまり監督のメッセージが感じられる交代だった。バルセロナは諦めて、とにかく中に入れろ!と。

79分にポドルスキが得た、ゴールまで26mフリーキック。左利きキッカー渋滞の神戸。ポドルスキ、ティーラトン、三田がポジションにいる中で、ティーラトンが蹴る。カーブのかかったボールは権田がファインセーブ。後半頭のキャッチミスが致命傷にならなくて本当に良かった。ひたすら耐える鳥栖。右サイドバックに回った小川と吉田のマッチアップもほぼ吉田に軍配が上がっている。でもまだあと10分以上ある。

ついに実を結んだロングボール大作戦

ロングボール大作戦を神戸は加速させる。策はこれしかない。前にハーフナーとウェリントンが待っているので、どうしたって脅威ではあった。だからこそボールホルダーへのプレッシングは欠かせない鳥栖。フリーでボールを蹴られたらひとたまりもない。中央で前半から懸命な走りを見せていた福田・高橋秀人・原川の中盤3人はまさかのフル出場だった。

さすがに疲れたのだろう。87分、ポドルスキがパス交換で抜け出した場面での寄せが一瞬甘くなってしまう。そうなれば絶好のボールを供給するのがポドルスキ。エリア内に放り込まれたボールを、ウェリントンが頑張ると、ボールはエリア外にいたハーフナーの目の前に。ハーフナーは左足一閃!こいつも左利きだ!ゴールに吸い込まれたボール。そして鳥栖サポーターの悲鳴。ハーフナーはミドルも強烈。ミドルを打つだけなら別にポドルスキでも、三田でも、ティーラトンでも、田中順也でも良かったけれど、90分間も体を張って頑張り続けたハーフナーへのご褒美ということで。

ハーフナーがいたDFラインの前の位置は高橋秀人が抑えることになっていたし、ギリギリまで高橋秀人はそこにいた。しかし、枚数は足りていたけれど、ボールが入ったウェリントン高橋秀人が全速力で突進してしまう。競り合いで高橋祐治が転倒していたからかもしれない。よってハーフナーはエリア外でフリーになっていた。痛恨のミス。行くなら絶対にクリアをしなくてはいけないし、クリアできないのなら行くべきではない。その後も神戸は放り込みを続けたが、スコアはこれ以上動かず。11のドローゲームに終わった。

試合を終えて

鳥栖としては、勿体ぶらずにプレス担当をもう1枚代えておきたかった。前半はカウンターの連続、後半はボールホルダーの追い回しと、この試合の中盤3枚の運動量は半端なかった。走行距離は全員12km超え。交代枠が余っていて、高橋義希という適任者がいたのにも関わらず、切れなかったカード。87分まで守れていた中盤を変える勇気が持てるか?といったら難しいし、鳥栖をガス欠寸前に追い込んだ神戸を称えるべきなのかもしれない。高橋祐治を入れて放り込みの中を強化したのは良かったのだけれど、少しの隙を突かれてしまうのがサッカーというスポーツだ。ポドルスキという選手がいれば尚更だ。インフルエンザのフィッカデンティは無念。けれど、後半のひたすら殴られる展開で1失点に抑えたのはさすがで、ウェリントンとハーフナーのパワープレーが25分間も続く展開は他のチームなら間違いなく逆転されていただろう。今年も鳥栖は良いチームに仕上がっている。強いて言えば、イバルボが不在時、豊田もいないけど、誰が点を取る位置に行くの?という点が懸念かもしれない。パルマのシリガルディを取ろう!って話は出ていたけれど、続報がないままだ。

もうパスサッカーなんてクソ食らえだ!と言わんばかりのクロス攻勢を、神戸は次の試合でもやるのかはわからないが、集めたスカッド的には一番向いているサッカーだった。理想と現実ってあるよね、ということ。バルセロナを目指すつもりが、モイーズのユナイテッドだ、もしくはストークだ、などと揶揄されている神戸サッカー。実はバルサスタイルというのは嘘で、本当は放り込みサッカーをやります!という感じだったら超面白いと思う。でも、そのサッカーを続けることで、三木谷社長は我慢できるのか。急にとんでもない監督(とその弟子たち)を大枚を叩いて呼んできそうな気がする。そうなりゃマジで一時期のユナイテッドじゃないですか。

 

*1:チームの決め事では原川力がキッカーの予定だったが、田川が蹴りたいと直訴してキッカーを変更した。開幕戦で開始早々の大事なPKを蹴らせてもらえるのだから、田川はかなり信頼されているのだろう。同じように10代でスタメンに定着していた鎌田大地も絶大な信頼を置かれていたと記憶している。鳥栖には若い選手が信頼され伸びていく土壌がある。