まだ少しだけ青春のそばにいたい皆様へ。fish in water project『セツナブルー』を聴いてください。
http://fishinwaterproject.wixsite.com/the-band/biography
青春は儚く短い。
けれども、青春を懐かしむ期間、青春ごっこをして遊ぶ期間は意外と長い。
そんなことをしながら、少しずつ青春に遠ざかる。アルコール無しで夢を語れなくなる。教室も放課後も失っている。社会の規律が、周りの目が、自分の立場が、年齢が、気になり出しては仕方なくなる。
あの日から遠ざかるその速度に、抗うかのように僕らは生きている。
ドラマみたいな青春じゃなくていいから
ちょっとした幸せがあればいいよね?
まだ、少しだけ青春のそばにいたい皆様へ。本当に良い曲があります。
fish in water project『セツナブルー』
なんて真っすぐなタイトルなんだろう。切なくて青い。
歌詞が抜群に良い。その全てを切り出したくなる。
サビの歌詞はこちら。
君との晴れの日の散歩も雨の日の雨宿りも全部が思い出なんだ
時の流れに逆らってもやり直せはしないのだから
それなら二人だけの秘密にして永遠にしよう
一見すると、青春要素がやや過剰気味に詰め込まれている歌詞だが、絶妙なメロディーによって、驚くほどまばゆい煌めきを放っている。
Aメロ、Bメロは、声色も少しを抑えめに、ボーカルの低い声が女声コーラスと綺麗に混ざり合う。同じくして歌詞も、
真夜中照らす月の光のように君は笑って言ってたね
明日もここで今日みたいにいたいねってさ
のように、普遍的な日常の風景が描写されている。そしてそれは、青春の真っただ中を生きる人々にとっては「日常」でも、青春から少し離れてしまった我々にとっては、とにかく美しく切ない「あの頃」の風景なのである。
Aメロとサビでは少しだけ、主人公のいる場所が違っている。あえて言うなら、前者が「青春の真っただ中」で、後者が「青春から遠ざかっている状態=今」だ。
そして。サビが歌われるほんの少し前に、高い音でシンセサイザーが、感情の元栓を一気に開いたみたいに鳴って、ボーカルも心を剥き出しにして歌う。ここが本当に素晴らしい。
この手法は、Galileo Galileiが多用している。『青い栞』や『恋の寿命』において、サビで「今」に一気に感情を頂点に集め、痛いほどに叫んでいる。サビで温度がいくらか上がる。
「時の流れに逆らおうと」しながらも、少しずつ、少しずつ青春から遠ざかっていく自分の心情を歌う。そんなサビが非常にリアルで、人間らしくて、僕らの胸に切なく響く。
『セツナブルー』は「過去の自分を懐かしむ曲」ではない。サビで叫ぶ自分もまた、しっかりと青春の中に生きている。この絶妙な時間軸のバランスが出せるのはfish in water projectがまだ20歳前後のバンドであるからだろう。
fish in water projectは群馬在住のバンド。HOLIDAY! RECORDSから『MINORITY』という3曲入りのCDを発売中である。
fish in water project / M I N O R I T Y | HOLIDAY! RECORDS DISTRO
収録曲『Shall we dance?』という曲もsoundcloudで公開されている。こちらは、ギターのフレーズが気持ち良く、文字通り踊れる曲になっていて、非常に好みだ。
先ほどの手法や音楽性から、Galileo Galileiのフォロワー、と簡単にカテゴライズしてしまうこともできるだろう。もちろんそういった判断が彼らの可能性を狭めてしまうこともあり得るのだけれど、Galileo Galileiが特定の型に嵌まらずアルバム毎に次々と挑戦を続けたように、fish in water projectにも新たな道を切り拓いてもらえることを、両者のファンとして強く願う。
fish in water project、間違いなくこれから大注目のバンドだと思います。
fishinwaterproject (@fishinwaterprj) | Twitter
http://fishinwaterproject.wixsite.com/the-band