本田外しは正解か?サウジアラビア戦で見えた最適解。
(この記事は2016年11月15日に投稿されたものです)
サッカー日本代表はW杯出場をかけたアジア最終予選の真っ只中であり、本日はサウジアラビア戦が行われた。
結果は2-1で日本の勝利。清武と原口がゴールを決めた。 原口はこれで最終予選4試合連続ゴールとなり、司令塔として攻撃陣を操る清武と合わせて、完全に日本代表の中心となった印象を受ける。
この試合の前に、幾度となく議論にあげられていたのが「本田外し」というテーマであった。
要するに、2010年のW杯から実に6年近く日本代表のエースだった本田圭佑を先発メンバーに選ぶべきかどうか、である。
結果として本田はスタメンから外れた。後半開始から途中出場した彼は確かに勝利に貢献したが、これからの最終予選で本田をどう使っていくべきか、は大きな問題になるだろう。
過去にもあった本田不要論
本田をスタメンから外すかどうかの議論が起こるのはこれが初めてではない。常に結果が求められるポジションであり、ビックマウスであった本田は、結果が出なければ批判の的とされてきた。
2014年のW杯前もそうだ。その年の1月にACミランで移籍後初出場を果たしたものの、その後は満足な出場機会と十分な結果が得られぬまま、春先以降は病気の発症も噂されるほどの深刻な不調に陥った。(首に手術跡が見られたことから、甲状腺に関係する病気なのではとされているが、この件に関して現在まで本田は一切コメントしていない)
ブラジルW杯直前の最後のテストマッチ、現地でのザンビア戦において、ザッケローニ監督は不振の本田を先発から外すことを検討している。
7日ザンビア戦 ザック本田外しも想定(2014.6.6)
本田はこのザンビア戦でスタメン出場し2ゴールを決めた。ザッケローニ監督は本田を主軸に据えて戦うことを決断し、ブラジルW杯では全試合スタメンでフル出場している。
だが、この時の本田は明らかに不調であった。コートジボワール戦で見事なゴールを決めるなど最低限の役割を果たしたが、グループリーグ敗退という結果もあり、国内では本田への批判の声が非常に大きかったと記憶している。(同時に、結果を残せなかったもう1人のエース・香川真司への批判も大きかった)
不要論を結果で跳ね返してきた本田
その後も幾度となく本田不要論はメディアやファンによって展開されてきた。2014年以降、本田がトップコンディションで臨んだ試合は明らかに少なくなり、運動量の少なさやフィジカル面での劣化、さらには「彼はチームから孤立している」という論調で本田外しを主張するメディアも多かった。
それでも本田は、怪我や体調不良の場合を除けばスタメンであり続け、2015年にはW杯予選7試合連続ゴールを達成するなど、出場14試合で10ゴールをあげた。(同年、香川は4ゴール、岡崎は7ゴール。ただし本田はPKのキッカーとして3ゴールを決めている)
現状の本田は確かに絶不調
2016年現在の本田は、確かに不要論が出てもおかしくない状態である。
所属するACミランではリーグ戦12試合中わずか3試合の出場にとどまり、途中出場もしくは途中交代のため出場時間も非常に少ない。
日本代表でも、2015年は国内組だけで臨んだ東アジアカップを除く14試合すべてに出場していたが、2016年は全10試合中7試合の出場でここまで2ゴール。(出場した試合のチーム総得点は17。その中で原口元気が5ゴールを決めている)
そして、サウジアラビア戦の終了時点で、代表戦で本田は5試合連続ノーゴールとなっている。本田が代表で5試合もゴールを決められないのは2014年以来だ。
今回の本田不要論は2014年に似ているのだが…
2014年W杯グループリーグ第2戦ギリシャ戦から10月のブラジル戦まで、本田は6試合連続でノーゴールだった。だが、その6試合は強豪との試合が続いたことにより、チーム全体で6試合4ゴールと苦しんだ時期でもあり、単に本田だけが不調であったとはいえない。
チームが好調であったが本田は結果を残せていないという観点で見ると、2014年6月のザンビア戦に至るまでの3試合連続ノーゴールがそれに当てはまる。W杯前の調整試合という意味合いも強かったこの3試合で、日本は8ゴール(うち、岡崎と香川は2ゴール)を決めていたが、本田はノーゴール。簡単にボールを失うシーンも多く、本田不要の声は非常に大きくなっていた。
しかし本田は、ザンビア戦、続くW杯のコートジボワール戦でゴールを決めてみせ、自身の存在感をアピール。雑音を結果で黙らせた。
実は本田にとって重要だったオマーン戦
過去になぞらえて考えるならば、そのザンビア戦にあたる試合こそが、先日のオマーン戦だったのではないか。
大事な最終予選に向けた調整試合、試合勘不足という状況で本田不要論も取り沙汰される中、オマーン戦まで3試合連続ノーゴールだった本田だったのだが…
サウジアラビア戦の4日前に行われたキリンチャレンジカップ・オマーン戦で、本田は先発するも、見せ場も無いまま61分で交代となった。
もしかしたら、本田にはもう苦境を跳ね返す力が残っていないのかもしれない。
本田も世代交代の象徴だった
世代交代というのは何度も繰り返されるものである。そして本田も、一時は世代交代の象徴としてその名を轟かせた。
2009年、31歳になっていた日本のファンタジスタ・中村俊輔は慢性的な怪我に悩まされ、コンディションを落としていた。そこで台頭したのが本田圭佑だ。
参考記事:南アで見えたもの。中村俊輔は日本代表に不要か by 藤江直人 | 「論スポ」編集長の水道橋の不夜城! | スポーツナビ+
最初は共存という形で、本田をサイド、俊輔をトップ下、というように起用していた岡田監督だったが、2010年のW杯前に、トップ下を削り、阿部勇樹をアンカーに起用する4-1-4-1の守備的フォーメーションへの変更を決断。ポジションを失った俊輔はベンチに追いやられた。そのW杯で2ゴールをあげ、日本の中心選手となったのが、本田圭佑なのである。
日本の中心選手が第一線から退く年齢
中盤やFWなどの攻撃的な選手は、だいたい30歳前後で代表の中心から外れている。
31歳で代表から退いた中村俊輔と共に、日本の中心的存在だった中田英寿も、晩年は怪我に悩まされ、29歳で現役を引退。キングこと三浦知良がフランスW杯で選外となったのは31歳。長く日本のエースFWとして活躍した柳沢敦は29歳で、高原直泰は28歳、名波浩も28歳、福田正博も28歳で代表から退いた。
ボランチやDFの選手では、32歳で今も主将である長谷部誠、32歳まで代表でプレーした中澤佑二、34歳でW杯に選出された遠藤保仁などがおり、比較的選手寿命は長い。
本田圭佑も今年で30歳となった。既に全盛期のような無回転フリーキックやフィジカルの強さを生かしたキープ力は見られない。背の高さを生かしたヘディングや左足でのアシスト能力こそ健在であるが、運動量の少なさは明らかであり、先発フル出場の回数は大きく減っている。
本田外しに必要な、代役の説得力
本田を外すこと、それは他の誰かを選ぶことでもある。
中村俊輔を外す際、岡田監督は代役を用意するのではなく、フォーメーションの変更を選んだ。しかし現状で、ハリルホジッチ監督は布陣の変更を予定していない。
つまり、本田の主戦場である「右サイド」に代役が必要となる。
サウジアラビア戦で右サイドで起用された久保、オマーン戦で右サイドでテストされた浅野は、ふたりとも22歳と若く、次代の日本を担う可能性のある選手だが、どちらも適正ポジションはFWで、サイドの経験が浅い。久保は前半の45分で交代を余儀なくされた。
誰が右サイドを制するのか
他に候補となり得るのは、現状では小林悠、斎藤学、宇佐美貴史、武藤嘉紀などだろうか。以前このポジションで使われていた岡崎慎司や清武弘嗣を使うという手もある。トップ下で明らかに定位置を確保した清武を右に回すならば、トップ下は香川を戻すことも考えられるが、香川の不調は本田以上に深刻だ。ならば、大迫が入ったことでポジションを奪われた岡崎を右に回すのが現実的ではある。
ただ、岡崎も30歳であり、早急に代役が必要となる年齢だ。現時点では、本田を外す口実はあっても、本田の代役が見つからない。
現状での最適解が見えたサウジアラビア戦
サウジアラビア戦で本田は後半開始から出場した。
本田以外の選手を右サイドで試し、ジョーカーとして本田を待機させるサウジアラビア戦での戦い方は、暫定的措置であったとはいえ、最適解に思える。
確かにかつてのような、苦境を跳ね返して試合を決める本田はもういないかもしれない。90分フル出場できる体力はもうない。しかし、サウジアラビア戦の2点目の起点となった長友へのパスや、その前のオーストラリア戦での原口のアシストなど、まだまだゴールに直結するプレーができる。時間や使い方を限定した起用をすれば尚更だろう。
本田は不要ではない。大事なのはその使い方
サウジアラビア戦の前半の試合運びを見ると、本田・香川・岡崎の3人がいなくとも、大迫・清武・原口を中心に攻撃を組み立て、何度もチャンスを作ることができていた。もはや本田は日本代表の中で絶対的な存在ではなくなっている。
しかし、彼の左足とヘディングの強さは、今の日本代表では重要なオプションである。
現在の日本代表には左利きの選手が少なく、今回FWとして選出された選手の中では本田が唯一の左利きだ。(中盤には小林が、DFには丸山がいる)
また182cmという身長も、FW陣では大迫と並んで最長身であり、実際に最終予選のUAE戦ではヘディングでゴールを決め、浅野の幻のゴールの前にもヘディングでパスを送っている。
左利きでサイドもできる長身の攻撃的な選手は、今回選出されたメンバーや、候補とされているメンバーの中でもあまり見当たらない。
本田がジョーカーとして、十分なインパクトを残せるかどうかは今後テストをしてみなければわからないが、試す価値は間違いなくあると思う。
本田不要論、不要論
ハリルホジッチ監督が今後どのように本田を起用するのか、そして本田のコンディションがどう変化するかは不透明だ。
しかし、今後も厳しい戦いが予測されるアジア最終予選の中でもし、監督が本田を使いこなせないとしたら、日本代表にとっては大きな損失になる。
ジョーカー。これが本田と日本代表にとっての最適解だと思う。
本田圭佑という選手は日本代表に間違いなく必要なのだと、彼自身で証明してほしい。その先に、日本代表のW杯出場が見えてくる。