銘々と実損

書かなくていい、そんなこと。

マヂカルラブリーと野田ミュージカルを愛している。M-1グランプリ2017

 
昨日行われた2017年のM-1グランプリ、皆さんどうでしたか。相変わらず良い大会でしたね。来週もやればいいのにね。*1
 
そんな中、出場したマヂカルラブリーと審査員の上沼恵美子さんが大きな話題になっています。ネタ披露後に上沼さんが「よう決勝残ったな」と発言するなど、マヂカルラブリーに対して厳しい評価を下したことが大きな要因です。
マヂカルラブリーが決勝の舞台で披露したのは「野田ミュージカル」というネタ。実は、準決勝でもほぼ同じネタを披露しています。この準決勝で「野田ミュージカル」が大ウケしたことにより、マヂカルラブリーは見事決勝への切符を掴み取りました。今回は「なぜマヂカルラブリーが決勝に残ったか」を簡単に解説しつつ、落ち込んでいるかもしれないマヂカルラブリーに、超面白かったよ!!!!!というメッセージを伝えたい!!!本人へ届け!!!!!

 

マジカルラブリーじゃなくてマヂカルラブリーだよ

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公式ホームページより

マヂカルラブリーはボケの野田クリスタルさんとツッコミの村上さんによって2007年に結成されたコンビです。ちなみにツッコミの村上さんの本名は鈴木崇裕です。何を言っているかよくわかりませんが*2、いちいち引っ掛かってると本題に入れないのであとは魔法のiらんどで作成されている彼らの公式ホームページを見てください。未だにBBS*3が稼働してます。公式が病気。*4*5

マヂカルラブリーHP - 魔法のiらんど

他のネタも見てみよう

 
彼らが今年のM-1準々決勝で披露したネタをここでご覧ください。


簡単な算数の文章問題を解くはずが、「ウェエエーーー!」という呻き声を合図に「りかちゃん」に扮する野田さんが豹変。野田さんの奇怪な動きがどんどんエスカレートしていく、というネタです。超好きだ。
マヂカルラブリーの面白さの軸は野田さんの独特な動きと理不尽な展開によって構成されています*6。動きによるボケが多い分、笑いの手数はどうしても少なくなります*7。いかに野田さんの動きで観客の心を掴むのかが重要で、はっきり言うならば野田さんにハマるかどうかであり、もともと初見では好みが分かれやすいタイプではあります。
結成から10年。M-1に挑戦すること8回。模倣困難なマヂカルラブリーのスタイルはお笑いファンの間では完全に浸透し、多くの支持を得ました。そして今年、勝負ネタとして、準決勝、そして決勝で披露されたのが、前述の「野田ミュージカル」でした。
 

野田ミュージカル=野田のベストアルバム


野田ミュージカルはいわば、「野田のベストアルバム」です。スサノオノミコトや天然お馬鹿さんキャラやベランダやいじめやりかちゃんやスモ吉*8などの傑作ネタで見られる「野田の動き」が凝縮された、まさに総集編、最高傑作と称すべきネタです。現に、3回戦や準決勝では決勝進出するに相応しい程の笑いの量でした。しかし、決勝ではご覧のような結果に。なぜでしょうね、上沼さん。
このネタは「登場人物が全員客」というボケが全てです。何度もこれを繰り返します。これだけで笑いを取るのだから、かなりの力技です。さて、ファンはこの「野田ミュージカル」を本物のミュージカルとして見ている節があります。というか僕はそうです。どういうことかと言うと、うわーーー!!!野田さんだーーー!!!という気持ちで見ています。他のネタで見たあの野田さんの動きが再演されている!という感動すら覚えます。
この部分の捉え方が違うと、笑いの種類が変わってしまう可能性があります。要するに、「変な客を色々と演じるコント」としてあのネタを見ると、繰り返しのボケがあまり響かず、今回のような評価になっても仕方ないかもしれません。

あの野田クリスタルのミュージカルが開催されるというワクワク感。完全に野田さんの動きなのに実は客だったという裏切り。徹底されたお約束。明らかに野田というキャラを前面に押し出した、マヂカルラブリー玄人向けのネタでした。マヂカルラブリーを良く知るお笑いファンが多く観覧していた準決勝では大ウケし、ライトなお笑い好きも見る決勝で大きくハマらなかったのは、こういう理由だと思っています*9*10。野田を知っていればかなり笑える。野田を知らなければまあまあ*11タモリ俱楽部を見たことないのにパニーニの空耳アワーのネタを見せられてる感じですね*12
 

村上さんもおかしい


この漫才は、入りから既に野田を知っていること前提で話が進んでいます。

野田「今日ここで、野田ミュージカルが行われるんだけど、観てく?」
村上「・・・観てく」

というやり取りは、普通のコンビなら「いや野田ミュージカルって何だよ!」みたいなツッコミが必ず入るところです。しかし、野田に魅せられた人間たちは思うのです。「野田ミュージカルが見たい!」と。そして、相方である村上さんこそ、野田に最も魅せられた人間なのです*13。ツッコミという仕事を放棄して、「・・・観てく」と言う他ありません。そりゃ観たいよね野田ミュージカル。
そういや当たり前の光景なので忘れてたんですけど、ピンクのカーディガンを着てる太目の男性がツッコミ役というのは一般的にはめちゃくちゃ異常ですね。ツッコミ=常識人という定石を完全に無視している。これは盲点でした。マヂカルラブリーを初めて見た時の衝撃、確かに凄かったもんな…
 

千鳥でも苦戦したM-1


キャラクターが浸透していないコンビがキャラ重視の漫才をM-1でやるのは博打です。今をときめく大漫才師(おおまんざいし)である千鳥も初期のM-1で2度連続で最下位になっています。現在ではスベり知らずの千鳥も、東京でキャラを定着させるには苦労しました*14。上沼さんの言っていることはとても分かります。M-1ファイナリストなら誰がどのタイミングで見ても面白い漫才をしろと言ってるように感じます。去年も予選で大ウケして決勝に進んだスリムクラブ上沼恵美子に超ダメ出しされるという事件がありました。*15

マヂカルラブリーに必要なのは自分たちのスタイルを浸透させることだと思います。このまま自分たちのスタイルを貫き通してほしいです。人によりますが、見れば見るほどマヂカルラブリーは面白くなってくるのでとりあえず見ましょう。いろいろ慣れます。麻痺します。麻痺したところでもう1回野田ミュージカルを観て大爆笑しましょう。然るべき時に然るべき場所で出せば爆発するネタであることは間違いありません。野田ミュージカルがテレビで大ウケする日を待ち望んでいます。


上沼さんに会う前に一旦セーブしておいた方がよかった

 

*1:番組中の松本さんの発言より。若手が死んでしまう。和牛は何本ネタを作ればいいんだ

*2:もっと言うと正式な芸名は「村上飛車角抜きで斉藤」と言うらしい。それは何。

*3:掲示板のことだよ!懐かしいね!

*4:宣材写真の服装のように、野田さんは昔ランニングにジーパン、裸足で舞台に出ていた。その後スーツを着るようになったが、筋トレにハマってめちゃくちゃマッチョになった。逆じゃないか!?

*5:村上さんは眼鏡を外すと渡辺徹に似ているという持ちネタがあるので、上の写真を見ながら想像で眼鏡を外してみよう

*6:あくまで軸がそこなだけであって、独特な自己紹介のツカミ、ボケを解説しつつツッコむ村上さんの丁寧さ、多用される「間」の取り方など、好きな要素を上げればキリがありません。好きです

*7:一般的に手数が多い方が賞レースでは有利とされています。ボケの量で圧倒してM-1で優勝したNON STYLEが最たる例

*8:全部彼らのネタの名前。全部面白い

*9:M-1が準決勝までと決勝で大きく審査基準やウケる基準が変わってしまうのは昔から指摘されているのですがこれは順応するしかない

*10:ちなみにM-1を良く知るファンは上記などの理由から大会前に「野田ミュージカルは決勝では厳しいかも」とTwitter上で指摘しており、上の動画にもある「リカちゃん」を推す声が多かったです。だからこそ野田ミュージカル開演にファンは歓喜した

*11:野田を知らない人向けに自己紹介のツカミを「野田です」のバージョンでやったのだろうけど、個人的には別のツカミをかましてほしかった。「村上殺しです」とか

*12:この喩えが伝わらない人が味わってる感覚こそ今回のそれ

*13:たまたま客として来ていたライブで野田さんを見て、その面白さに衝撃を受けた村上さんがコンビ結成を申し入れたというエピソードがあります

*14:ピカルの定理の話はしてはならない。そんな千鳥はM-1終わりの打ち上げでずっと胸に響くことを言っていた。負けた経験があるからこそ。泣ける。

*15:毎年公開処刑があるM-1ってどうなの?という意見もある